人々に見られて虹の美しや
積み上げし積木涼しく崩れたり
四本の弾力に立つ鹿の子かな
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
twitter発表句を推敲自選(7句)し、葉書サイズに印刷(特番20句あり)
人々に見られて虹の美しや
積み上げし積木涼しく崩れたり
四本の弾力に立つ鹿の子かな
墨書太々夏痩と言ふ便り
髪洗ふ姫君月へ帰るべく
金魚ゆらゆら母船を待つてゐるやうな
白妙の入道雲や船の旅
ぱかと開く缶ペンケース夏の蝶
しみじみと月のなき夜の月見草
今年(2019年)発行の開発素句報
その葉書俳句、全12枚の画像
一年を炬燵の城に振り返る
初富士に跳ねて目出度し金目鯛
朝湯して身を清めたる寝正月
雪を来て百花の春や初芝居
球根は時限爆弾土に秘す
紫の花が楽しみ茄子蒔く
花になき緑の粉ぞつくしんぼ
春の水ゆたかに城を守りをる
満開の花より白し塩むすび
食パンの三斤棒や春深し
番付で言へば大関豆御飯
傘さして雨の茅の輪を潜りけり
虹も出てとても綺麗な雨あがり
柿の実の大暑に耐ふる緑色
サイダーとラムネの差異を雲に聞く
団扇絵の美人片手に夕涼み
ハンカチと生れて日々を清らかに
向日葵で円盤投げをしてみたし
暗闇に団扇を探る暑さかな
茄子の馬流線形でありにけり
化学式美しかりし花火かな
海峡に鯱と鯨や夏の月
かはほりと蝙蝠傘とバットマン
新涼や水切籠に皿を挿す
桃すする幼なのほつぺ落ちさうな
申し訳なささうな黄を青蜜柑
菊の香のつんと神代の昔かな
一年で果つる虫草秋の風
柿の木がこの柿食へと枝垂れけり
湯煙の夜空に消ゆる紅葉かな
少しづつ天気良き日の冬支度
木枯に売るや箒を逆立てて
赤や黄の面影のある落葉かな
水鳥は冷たき水に素足なり
言葉さへ躓くやうに日短
食へといふ根・人・柑や冬至の夜
毛並よきものを誂へクリスマス
優しさは蜜柑の皮を剥くやうに
楽しくて体にも良き炬燵かな
少年の一人住む星クリスマス
濾過さるる珈琲豆や去年今年
新年や革のソファーに深々と
見開きの新年号の色香かな
昼寒し夜なほ寒し日々寒し
魂も冬青空も透き通る
雪に咲く白き椿の金の蕊
みちのくのここ千年の雪景色
身を細う落葉溜りの小草かな
ゆらゆらと磁石の針や春隣
伏せて置くバケツの上に雪丸う
自転車の籠にも雪の降り積る
雪の夜の地下に静かに閉架図書
差し足の鶴や氷をぴしぴしと
砕けては雪より白し玉霰
葱さげて家路の人となりにけり
金屏を立てたきほどの雪達磨
ここ掘れば雪にまみれし紅椿
派手好きの様見ておけと枯蓮
ラグビーのボール方向音痴なる
はるかぜを東の風と書くことも
春色を引く唇のまだ冷た
ビーナスに天使の降らす石鹸玉
光にも微かな重み石鹸玉
蕎麦にするか饂飩にするか梅見茶屋
暖かや前歯の欠けし女の子
海の見えるデパートで買ふ桜餅
俯せに本の眠れる蝶の昼
対岸の花に届けと花吹雪
花浴びて青草萌ゆる川原かな
火を焚くは戦の如し花篝
山々を押し開き行く春の川
細き枝の先の先まで芽吹きけり
恋猫でありし昔や猫ねむる
全山は今沸騰の桜かな
花びらは花を離れて空の旅
花びらは桜の花の涙かも
春暁の海滴るや桜海老
古き良きものの一つに春の風
蒲公英や波打際の波殺し