俳壇賞 2022 落選作
プランA「紙吹雪」30句
落選作
◎葉書俳句
◎テキスト
春
明るくて雲も浮んでみたき春 ハードエッジ
浮んで:
あたたかや海に浮んで海の鳥 今井杏太郎
てふてふも浮んでほとけさまの山 今井杏太郎
さくら散り泡は浮かんでなくなりぬ 池田澄子
鴨の子の水に浮かんでゐる軽さ 北川あい沙
ほのぼのと橋が浮んで螢沢 細川加賀
霧の町字幕浮かんで来るごとし 加藤静夫
顔だけが浮かんでゐたる焚火かな 加藤かな文
白鳥や空母浮んでなにもせず 和田悟朗
浮んで/自作:
明るくて雲も浮んでみたき春 ハードエッジ
春楽し雲が浮んで日が差して ハードエッジ
この濠に生れて浮んで貸しボート ハードエッジ
ぷかぷかと海に浮んで冷蔵庫 ハードエッジ
蟻一つ浮んでゐたるバケツかな ハードエッジ
真夜中に浮んでゐるは金魚かな ハードエッジ
万緑に浮んで長し高速路 ハードエッジ
寒入日浮んでゐるがやつとかな ハードエッジ
青空に浮んで重し凧 ハードエッジ
きらきらと古き埃も御開帳 ハードエッジ
埃:
掃き出せる埃も春の光かな ハードエッジ
屋根替の埃酒よと配り来し 東出ひろ
囀やピアノの上の薄埃 島村元
大阪や埃の中の油照 青木月斗
茂り合ふ草に旱の埃かな 尾崎紅葉
町あつく振舞水の埃かな 黒柳召波
曝す書の古き埃を払ふなり ハードエッジ
閻王の紅蓮の舌の埃かな 富安風生
蟻の巣に埃被りし蟻戻る 大西朋
うつすらと埃うかべて水澄めり 若井新一
自動車の過ぎし埃に秋の蝶 星野立子
大寒の埃の如く人死ぬる 高濱虚子
枯菊に触れて立ちたる埃かな 上野泰
水仙にたまる師走の埃かな 高井几董
麗かやトントン叩く赤子の背 ハードエッジ
失敗作
とんとん:
梅咲くや鳥とんとんと土のうへ 南うみを
とんとんで事を収めし冷奴 ハードエッジ
たべ飽きてとんとん歩く鴉の子 高野素十
藁砧とんとんと鳴りこつこつと 高野素十
夜なべしにとんとんあがる二階かな 森川暁水
春を待つとんとんとんと紙揃へ 金子敦
とんとんと年行くなないろとんがらし 草間時彦
とんとんと上る階段年忘れ 星野立子
餅板の上に包丁の柄をとんとん 高野素十
五線紙のお玉杓子が歌ふ春 ハードエッジ
五線紙:
紅梅や五線紙にかく音生れ 池内友次郎
夏
初夏を行く白髪頭の婆二人 ハードエッジ
イマイチ
ふるさとの小さき展望台の夏 ハードエッジ
展望台:
その上に展望台や山笑ふ ハードエッジ
夏の湖へ展望台の砂こぼす 古舘曹人
小雀居てリス居て島の展望台 山田裕理子
退屈に展望台を歩む蠅 岬光世
氷柱垂る霧のアルプス展望所 小原菁々子
飾りたる注連も回転展望台 奥野ただし
天守閣よりひとひらの揚羽蝶 ハードエッジ
「高い所より」俳句
天、宙、空、、、等々
誂へて裏地は黒に銀日傘 ハードエッジ
裏地:
囀りや紅絹の裏地の笛袋 太田寛郎
紫木蓮はだけて裏地みせをりぬ 田辺須野
虫鳴いて裏地のやうな故郷かな 大石雄鬼
雁や蔵の匂ひの服裏地 栗林千津
子の髪を水泳帽の中に詰む ハードエッジ
水泳:
水泳をするときに頭に被るもの ハードエッジ
水泳の勝者は水を打ち叩き 小林貴子
裸体なる先生胡坐す水泳所 夏目漱石
勝者なく寒中水泳終りけり 伊藤通明
涼しさに住んでもみたき土星の輪 ハードエッジ
土星:
花びらや飛んで土星の輪となりぬ ハードエッジ
土星の輪すなはち永久の花筏 ハードエッジ
新涼の皿より薄し土星の輪 ハードエッジ
火星より土星へ飛びぬ絵双六 宇志やまと
夏痩の自画像を描く鏡かな ハードエッジ
自画像:
自画像をまじへて永き日の個展 鷹羽狩行
自画像は描きかけのまま緑さす 鷹羽狩行
自画像に目を入れてゐる生身魂 ハードエッジ
自画像の古くて若し生身魂 ハードエッジ
日向ぼこして自画像のやうになる 後藤立夫
森の字に木の字の小さし蟻の列 ハードエッジ
橋長し夕焼の海を見つつゆく ハードエッジ
見つつ:
笑ふ山見つつ雪解の山のこと 稲畑汀子
二階へ運ぶサイダーの泡見つつ 波多野爽波
植うる田を明けの駅員見つつゆく 剣持洋子
腕時計見つつキヤンプをたち出づる 成瀬正俊
梅の実を叩くを見つつはらはらす 相生垣瓜人
踊の灯幾つも見つつ北へ汽車 岡田飛鳥子
号外を見つつ冬日を来る二人 阿部みどり女
雪晴の富士など見つつ来られしや 星野立子
見つつ/自作:
夜桜を見つつ下りぬ夜の坂 ハードエッジ
朝々の桜を見つつ隅田川 ハードエッジ
散る花を見つつぐるりと一廻り ハードエッジ
夕立を見つつ肴をみつくろふ ハードエッジ
橋長し夕焼の海を見つつゆく ハードエッジ
十薬も坂道なれば見つつ行く ハードエッジ
対岸の焚火を見つつ家路かな ハードエッジ
雪山を遠くに見つつ梅探る ハードエッジ
枯木にも美醜ありけり見つつ行く ハードエッジ
牛乳を飲んで夜店に行くところ ハードエッジ
牛乳:
吹いて飲む牛乳に膜春の雪 川崎展宏
梢に巣函幹に末子の牛乳函 中村草田男
牛乳をコップにそそぐすずしさよ 千野千佳
梅雨日曜牛乳ほどのあかるさに 阪西敦子
牛乳をごくんごくんと夏休み 金子敦
その朝の猫に牛乳原爆忌 鳥居おさむ
新聞に遅る牛乳獺祭忌 高萩篠生
牛乳を飲んで朝顔数へけり 前北かおる
牛乳やこたつで過ごす日曜日 山下つばさ
牛乳の膜こそ永久に不滅なれ 攝津幸彦
秋
絶え間なく花火のあがる哀れかな ハードエッジ
絶え間:
コース同じ奈良の遠足絶え間なし 右城暮石
ちひさくも絶え間なく声泉汲む 中田剛
凍蝶の夢の絶え間か翅うごく 山田弘子
パトカーは白黒に金秋の風 ハードエッジ
パトカー:
パトカーを連れメーデーのデモの列 中本真人
消防車救急車パトカー散乱毛布の上 今井聖
秋草をリュックに挿して花舗を出づ ハードエッジ
花舗:
春燈にかしづくごとく花舗の花 五十嵐播水
花舗近く住む幸もありフリージア 宮脇白夜
花舗の灯のことにあかるき夜寒かな 片山由美子
昼の月花舗に芒の溢れをり 林原耒井
軒氷柱雪国の花舗暗かりき 古賀まり子
花舗の裏暗し聖夜の川流れ 岡本眸
花舗になきもの風前の返り花 ハードエッジ
墨を得て筆ふくらむや稲穂波 ハードエッジ
小判:
大熊手かつぎ直すに小判鳴る 菖蒲あや
学問も小判も囓つてみて師走 櫂未知子
山始小判も掘らぬ犬連れて 龍岡晋
冬
冬帝はお年を召して気難し ハードエッジ
氷柱にはなれず平らに氷る水 ハードエッジ
湯婆は小判のかたち暖かし ハードエッジ
新年
紙吹雪ふらせてみたき初日の出 ハードエッジ
雪国は雪を敷き詰め初茜 ハードエッジ
若水や雪と氷を打ち開き ハードエッジ
湯の宿の二階に泊つる去年今年 ハードエッジ
大根も牛蒡もありて注連飾 ハードエッジ
太箸やどかと置かれし赤ん坊 ハードエッジ
どかと:
かげろふにどかと大仏座しゐたり 岡崎陽市
夏の雲どかどか浮いてゐたりけり ハードエッジ
どかと解く夏帯に句を書けとこそ 高濱虚子
その辺にどかと座るや夏祭 西村麒麟
牡丹やどかと置かれしランドセル ハードエッジ
朝夕がどかとよろしき残暑かな 阿波野青畝
どかどかと夜食に来り「こんばんは」 ハードエッジ
どかと脱ぎし着膨れ衣跨ぎゆく 能村登四郎
エレベーターどかと降りたる町師走 高濱虚子
羽子突に梯子持ち出す騒ぎかな ハードエッジ
梯子:
梯子してぶらんこに差す潤滑油 ハードエッジ
囀や梯子を掛けて本探す 大谷弘至
夏草に隠る梯子の一段目 鈴木節子
棕櫚の花梯子とゞかぬ高さかな 正岡子規
長梯子松が支へて松手入 片山由美子
桃採のすみし梯子をあちこちに 長谷川櫂
柿の木に梯子そのまま雪二尺 宇佐美魚目
鯨切るや梯子なんぞを取散らし 野村喜舟
松過の竹の梯子を梅に掛け ハードエッジ
出初式梯子の空の上天気 富安風生
かつかつと女初旅ハイヒール ハードエッジ
ハイヒール:
ハイヒール呆然と提げ大干潟 櫂未知子
芙美子忌の芙美子の小さきハイヒール 岩崎眉乃
秋澄むや遺品の中のハイヒール 松野苑子
おしろいや日暮れて出て行くハイヒール 左名木京子
絨毯を深々と刺すハイヒール 竹岡一郎
松過の雨の温水プールへと ハードエッジ
雨のプール:
夜のプールを過ぎゆく春の驟雨かな 林桂
梅雨明けぬ市営プールの一帯も 百合山羽公
雨の中に雨降りずぶ濡れのプール 辻田克巳
通り過ぐ雨の母校のプールの香 鈴木鷹夫
秋蝉や温泉プール朝雨す 石原舟月
夏過ぎのプールを叩く通り雨 永方裕子
◎初案30句
◎推敲過程 テキスト
俳壇賞 2022 プランA 推敲 テキスト◎推敲過程 プリントに手書き
俳壇賞 2022 プランA 推敲 手書き◎落選葉書一覧リンク
DuckDuckGo 検索:
最新版はこちら
Google検索:
最新版はこちら
◎葉書俳句表側
以上です