ペア 88
◎鳩の中
あたたかや鳩の中なる乳母車 野見山朱鳥
半仙戯むらがり遊ぶ鳩の中 鈴木花蓑
◎招き猫
あたたかや裃付けし招き猫 三村純也
招き猫すこし汚れて日永かな 細川加賀
玄関に春を寒げにまねき猫 武原はん女
◎子のもの
春浅く子のもの干して紐垂るる 皆吉爽雨
まつさきに子のものを干し雪間草 友岡子郷
干物や子のものばかり秋の暮 野村喜舟
◎合流
合ふまでは違ふ流速雪解川 山口誓子
はしりきて二つの畦火相摶てる 加藤楸邨
◎死ぬ時
死ぬ時はあれよあれよと石鹸玉 ハードエッジ
菊見事死ぬときは出来るだけ楽に 日野草城
死ぬときは箸置くやうに草の花 小川軽舟
死ぬときも派手に和蘭陀獅子頭 櫂未知子
死ぬときはびわこになると思います 本多洋子
◎皆無
苗札の他は何にもなかりけり ハードエッジ
城址になんにもなくて風薫る 江國滋
初空のなんにもなくて美しき 今井杏太郎
◎さっと
花過の海老の素揚にさつとしほ 藤田哲史
囀やさつと焼きたるしらす干 鈴木真砂女
きぬさやをさつと炒めて朝の皿 長谷川櫂
◎乳と赤ん坊
虹消えし空より乳房赤坊に 野見山朱鳥
赤んぼの溺れる乳房夜の牡丹 大峯あきら
赤ん坊けふは秋刀魚の乳うまき 矢島渚男
赤ん坊の乳に吸ひつく稲の花 長谷川櫂
冬麗や赤ン坊の舌乳まみれ 大野林火
元日や乳に酔ひたる赤ん坊 小川軽舟
◎最盛期
日本の元気なころの水着かな 安里琉太
亜米利加が眩しき頃のクリスマス 鎌田保子
◎自転車、前うしろ
葉桜や子を自転車の前うしろ 若井新一
前うしろ乗せて自転車秋の空 ハードエッジ 1995
以上です