ペアリング32 霜掃きし箒しばらくして倒る 能村登四郎

追記:年末の箒2句/2020.5.24、移転:2句/2019.1.9

ペアリング32

 

◎余白

涅槃図ねはんず余白よはくは風のくところ  土生重次はぶ じゅうじ

涅槃図の余白の我を思ふべし  橋本榮治

屏風絵びょうぶえたかが余白をうかがへり  中原道夫

 

 

◎何やら女子

ものへば何やら安し草ゆる  中村汀女    ていじょ

小鳥来て何やら楽しもの忘れ  星野立子

日向ひなたぼこ何やら心せかれゐる  阿部みどりじょ

 

 

◎立ち位置

花びらにかくるるつぼみ桜草  倉田紘文くらた こうぶん

水仙の花のうしろの蕾かな  星野立子

 

 

◎汗の前後

楽にうて五月の汗の美しき  長谷川かなじょ

美しき五月の汗をぬぐはずに  鷹羽狩行たかは しゅぎょう

 

 

◎夜空の色

五月来る夜空の色のインクつぼ  成田千空    せんくう

山国の夜空のいろの茄子漬なすびづけ  若井新一

 

 

◎念力

念力ねんりきのゆるめば死ぬる大暑たいしょかな  村上鬼城    きじょう

念力のゆるみし小春日和こはるびよりかな  高濱虚子

念力もぬけて水洟みずばなたらしけり  阿波野青畝あわの せいほ

 

 

◎自給

豆を煮る豆殻まめがらく十三夜  萩原麦草

秋刀魚さんま焼かるおのれよりるあぶらもて  木下夕爾   ゆうじ

列車ぬおのが照らせる雪きつつ  榮猿丸さかえ さるまる

 

 

◎箒の運命

木にほうきたてかけ去るや秋の暮  福田蓼汀    りょうてい

しもきし箒しばらくして倒る  能村登四郎のむら としろう

たてかけて年は暮れ行く竹帚木たけぼうき 川崎展宏    てんこう

立てかけてある年の夜の箒かな 岸田稚魚   ちぎょ

 

 

◎カウンター

数へ日の数へるまでもなくなりぬ  鷹羽狩行

数へるにしても短日たんじつばかりなり  ハードエッジ

 

 

以上です