角川俳句賞 2024
プランＣ「ホ句は幾万」50句
落選作
目次
◎葉書俳句
◎テキスト
春
春立つや大暴投の始球式 ハードエッジ
春の句は肩の力を抜いてから ハードエッジ
肩の力：
掛大根肩の力を抜きませと ハードエッジ
囀や寺に寄進の屋根瓦 ハードエッジ
寄進：
寄進して去りし旅人梅の寺 鈴木花蓑
ことごとく寄進の瓦花の寺 長谷川櫂
釣鐘の寄進出来たり花盛 正岡子規
麦秋や我等寄進の鐘が鳴る 石井露月
寄進札大寄進札照紅葉 高野素十
厨事するも寄進や親鸞忌 田原紫城
一枚の瓦を寄進冬紅葉 高野素十
鳥籠より暗き巣箱であらうとも ハードエッジ
鳥籠：
如月や鳥籠昏きところなし 髙柳克弘
鳥籠に鳥のブランコ春深し 林昭太郎
美しやこの囀も鳥籠も ハードエッジ
鳥籠のブランコ揺する風五月 満田春日
鳥籠の中に鳥とぶ青葉かな 渡邊白泉
灯火親しむ鳥籠に布かぶせ 鷹羽狩行
虫籠は鳥籠よりも小さくて ハードエッジ
鳥籠の庭に朽ちゆく虫の声 ハードエッジ
小春日や粟のこぼるる小鳥籠 長谷川櫂
小春鳴く鳥籠に蜜柑入れてあり 鈴木花蓑
恋猫は大きな虹を引きずつて ハードエッジ
引きず：
薄氷を引きずつてゆく鴨の胸 小圷健水
末の子の凧引きずりて得意なり 羅蘇山人
赤子ごと引きずつて来し花筵 阿部静雄
落椿少し引きずる風のある 上野泰
風紋の上を引きずりし和布干す 阿波野青畝
古籐椅子引きずり場所を替へもする 高濱年尾
石のせしままに引きずり籾筵 若井新一
猪臭し猪引きずりし雪もまた 南うみを
引きず/自作：
雛を積みし舟の引きずる千羽鶴 ハードエッジ
恋猫は大きな虹を引きずつて ハードエッジ
広場かな西日の影を引きずりて ハードエッジ
濃き影を引きずるやうに撒水車 ハードエッジ
蟷螂の腹を引きずる哀れかな ハードエッジ
へし折つて鬼の引きずる大氷柱 ハードエッジ
二三人引き摺つて行くラガーかな ハードエッジ
引き摺りし裾千切れたる冬の蝶 ハードエッジ
白々と雪折を引き摺りし跡 ハードエッジ
あらあらと雪折を引き摺りし跡 ハードエッジ
校門を遠足バスの高みより ハードエッジ
高み：
ふらここの会釈こぼるるや高みより 炭太祇
春の鳶寄りわかれては高みつつ 飯田龍太
いかにして蠅捕紙をあの高み 小池康生
あぢさゐやこの高みまで来れば山 久保田万太郎
高みより我を見るおかめ熊手かな 行方克巳
寒鯉の背なの高みの現れし 岸本尚毅
風船のヘリウム・アルミニウムかな ハードエッジ
アルミ：
雨の日のプールサイドのアルミ椅子 ハードエッジ
空缶に鉄やアルミや秋の風 ハードエッジ
アルミホイルに包み夜食やアルミ皿 榮猿丸
小鳥の糞がアルミに乾き政変す 寺山修司
蹴られたる凹みアルミ戸凍てにけり 鈴木牛後
アルミ貨ほど身軽し勤労感謝の日 香西照雄
アルミ缶の踏まれて錆びず落葉道 ハードエッジ
花を詠むホ句は幾万ありとても ハードエッジ
幾万：
父征かば子は幾万のかざぐるま 仁平勝
尾をふる蝌蚪幾万を埋め売地です 加藤楸邨
幾万の蝉死に絶えて風の音 長谷川櫂
十二月八日の霜の屋根幾万 加藤楸邨
墓碑もなき幾万にかく冬枯れし 加藤楸邨
咲き満ちてこぼるる花の虚子忌かな ハードエッジ
咲き満：
咲満る花に淋しき曇り哉 正岡子規
咲き満ちて散るほかはなし花の雨 稲畑汀子
夜桜の雨夜咲き満ちたわゝなり 水原秋櫻子
厄介や紅梅の咲き満ちたるは 永田耕衣
咲き満ちて桜誉められゐたりけり ハードエッジ
咲き満ちて濃淡のある櫻かな 阿部みどり女
咲き満ちて神を恐れぬ桜かな ハードエッジ
咲き満ちて巌のごとき桜かな ハードエッジ
咲き満ちて降臨を待つ桜かな ハードエッジ
咲き満ちて桜に動悸ある如し 今瀬剛一
咲き満ちて鬼となりたる桜かな 佐伯秋
さくら咲き満つるや幹に吹き出るも 木内縉太
咲き満ちてこぼるる花もなかりけり 高濱虚子
咲き満ちて花の洛中洛外図 ハードエッジ
花の枝の咲き満ちたれば垂れにけり 岸風三楼
咲き満ちて花の翳りといふものを 市堀玉宗
夏
材木の杉や檜や花は葉に ハードエッジ
改案：
花は葉に杉や檜は材木に ハードエッジ 2024.10.31
材木：
材木のたてかけあるや軒の梅 西山泊雲
アイスキャンディー果て材木の味残る 佐藤文香
材木は立てて商ふしぐれかな 山本一歩
純白の氷河の端を神が削ぐ ハードエッジ
純白：
白木蓮に純白といふ翳りあり 能村登四郎
滝壺に晒して瀑布純白に ハードエッジ
純白の服もて日焼子を飾る 林翔
山百合の純白守り抜く香なり 廣瀬町子
花野来て夜は純白の夜具の中 岡本眸
崖さむし海鵜の糞の純白に 矢島渚男
純白で私を避ける雪ばかり 櫂未知子
街に雪この純白のいづくより 橋本榮治
埋火のその純白を掘り当る ハードエッジ
純白の手袋も買ひそろへたる 西村和子
マスク純白音大前の停留所 小池義人
純白の雲の喜び初御空 ハードエッジ
飛ぶ鳥や若葉の陰に蛇がゐて ハードエッジ
飛ぶ鳥：
飛ぶ鳥や氷柱はあれど春の山 大串章
飛ぶ鳥の鋭き嘴の囀れり ハードエッジ
飛ぶ鳥の日本を目指す夜長かな ハードエッジ
飛ぶ鳥の体を抜けし木の実かな ハードエッジ
飛ぶ鳥と地を行く鳥と浮寝鳥 齋藤朝比古
飛ぶ鳥は翼を広げ初日浴ぶ ハードエッジ
もう一度この黴臭き部屋を嗅ぐ ハードエッジ
もう一度：
もう一度部室に戻る卒業子 金子敦
もう一度子猫に生れ会ひに来よ ハードエッジ
もう一度午後のプールに来たといふ ハードエッジ
もう一度呼ばれて帰る秋夕焼 二村典子
もう一度神輿のとほる秋日和 柏柳明子
十薬を刈りし地べたに白き塵 ハードエッジ
白+塵：
白菊の目にたてゝ見る塵もなし 松尾芭蕉
鶏頭の白からんまで露微塵 山口青邨
戦後すぐの若き句集を曝すなり ハードエッジ
戦後：
戦前も戦後も昭和春の虹 仮屋賢一
入学す戦後飢餓の日生れし子 上野泰
パイプから戦後のけむりサングラス 川崎展宏
蝉喚くわが戦後史にコッペパン 斉田仁
可愛やとリンゴの唄の終戦後 ハードエッジ
大衆の通俗の原色の夏 ハードエッジ
原色：
突堤に原色五人西東忌 鷹羽狩行
蒲公英は原色の花頭を高く ハードエッジ
原色の赤の暑さと思ひ行く 石塚友二
原色の夜店煙の夜店かな ハードエッジ
束の間の原色を売る夜店かな 佐藤郁良
炎天や火の股ぐらで火を焚いて ハードエッジ
火を焚：
火を焚いて春の寒さを惜しみけり 岸本尚毅
石の上に秋の鬼ゐて火を焚けり 富澤赤黄男
送火を焚いて残りし灰の嵩 金子敦
掃かれあるところ門火を焚きし跡 稲畑汀子
迎火を焚けば生者の寄りきたる 大串章
ひとは火を焚いてあそべり神無月 神尾久美子
行く年の遠ざかるまで火を焚けり ハードエッジ
あかあかと火を焚き年を歩ましむ 野澤節子
火を焚いて夜を清らかに除夜詣 ハードエッジ
どんど待つ別の小さき火を焚いて 木戸節
海と山すこしずらして開きけり ハードエッジ
ずらして：
バス停の位置をずらして秋祭 堀之内和子
扇風機内蔵の服膨らみぬ ハードエッジ
膨らみぬ：
己が羽も混じりて巣箱ふくらみぬ 篠原元
正月の安けさに餅ふくらみぬ ハードエッジ
週明けや祭の屑も分別し ハードエッジ
分別：
朧夜や分別ゴミの尖りたる 大石雄鬼
波音のスローモーション心太 ハードエッジ
波音：
波音の中の薄紅桜貝 ハードエッジ
波音の太平洋や松の花 小圷健水
雨音の中の波音ところてん 岩淵喜代子
ふるさとの波音高き祭かな 鈴木真砂女
波音の由比ヶ浜より初電車 高濱虚子
蜜豆と冷し中華の色が似て ハードエッジ
色+似：
蠅取紙飴色古き智恵に似て 百合山羽公
にんげんの色合ひに似て蝸牛 西山ゆりこ
寒雀わが手袋の色に似る 田中冬二
枯葉かく人も枯葉の色に似て 中川宋淵
枯れいそぐ色の殆ど似て来たる 稲畑汀子
鮎の竿、網、梁、囮、鵜の鳥も ハードエッジ
梁：
永き日や梁より落つる松の脂 長谷川櫂
梁といふ強きものある涅槃寺 大牧広
百姓昼寝熊蜂梁を打つて去る 飯田龍太
青天井梁のあたりに揚雲雀 鷹羽狩行
とかとんと梁や柱や花の昼 ハードエッジ
朝涼や明治ずしりと梁・柱 能村登四郎
今朝秋の梁も高きに噛み合へる 能村登四郎
夜寒さの梁の太きを恃むかな 石川桂郎
梁に吊す鉤むきむきに猪を待つ 村田脩
大寒の静夜梁(うつばり)びしと鳴り 福田蓼汀
蟻の巣の深きを掘れば黄泉路かな ハードエッジ
黄泉路：
黄泉路にもぬかるみあるやひきがえる 高千夏子
百歳の黄泉路は花野分けゆくか 楠田光子
嬉々として黄泉路に鳴ける蚯蚓かな ハードエッジ
白桃や黄泉路の旅の安かれと ハードエッジ
現実を目の前にした西日なり ハードエッジ
現実：
炎天の現実女靴みがき 石橋辰之助
現実は多分トマトの丸かじり 櫂未知子
現実はかなし花火は夢ひらく 阿部みどり女
秋
釣竿に銀の手応へ天の川 ハードエッジ
釣竿：
植木市釣竿買うてもどりけり 中尾白雨
肱張りて鮎釣竿を構へたり 高濱年尾
釣竿に鮎のあはれや水はなれ 立花北枝
川床に釣竿よりのとばつちり 阿部みどり女
兄は釣竿弟は捕虫網 ハードエッジ
弓なりに釣竿の張る秋気かな 佐藤郁良
釣竿の白き一すぢ涼新た 佐藤郁良
釣竿の長き短き飛ぶ蜻蛉 石井露月
柿店に釣竿も置く日が差して 川崎展宏
湖に映りつ移る秋の雲 ハードエッジ
映りつ：
鳥帰るテレビに故人映りつつ 岸本尚毅
鳥帰るテレビにテレビ映りつつ ハードエッジ
人を待つ聖樹の玉に映りつつ 古川朋子
敬老日来年もまた会ひませう ハードエッジ
来年：
来年の命を契る接木哉 正岡子規
来年も芹摘む頃に又来たれ 高濱虚子
来年へ祖母の預かる捕虫網 山縣勝
手を振つてまた来年の夏休 ハードエッジ
来年も吹く秋風の今年かな ハードエッジ
来年は遠しと思ふいなびかり 相馬遷子
年号の来年変る炬燵かな ハードエッジ
来年は嫁ぐ日記の厚き買ふ 久米三汀
今年から兄と一緒の運動会 ハードエッジ
一緒：
花びらは一緒になつて飛びゆけり ハードエッジ
家族とは濡れし水着の一緒くた 小池康生
昨日から一緒に住んでいる蜘妹か 後藤麻衣子
緞通と一緒に届く千一夜 櫂未知子
兄いもといつも一緒に枯芝に 安住敦
去年今年一緒にゐるといふだけの 杉田菜穂
なかよしで何時も一緒よ初雀 ハードエッジ
南瓜硬し煮ればたちまちやはらかし ハードエッジ
硬し：
雛の顔触れて硬しや夜の雨 髙柳克弘
薄紅の唇硬し桜鯛 ハードエッジ
かたまりて落ちし柳絮に土硬し 星野立子
行く秋の実を柔かに種硬し ハードエッジ
足裏に東京硬し秋時雨 中塚健太
盆僧の羅硬し雑踏裡 殿村菟絲子
日に風に縮みて硬し鵙の贄 ハードエッジ
菊人形果てては菊を毟らるる ハードエッジ
毟らる：
門の草芽出すやいなやむしらるる 小林一茶
毟らるる菊芳しき料理かな 前田普羅
その中に耳の形の毒茸 ハードエッジ
耳の形：
惜春や耳の形の噴火口 京極杞陽
虎落笛胎児は耳の形して 森田智子
解体のビルの階段十三夜 ハードエッジ
解体：
かげろふに消防車解体中も赤 西東三鬼
解体の途中の家や猫の恋 柏柳明子
解体の和室のあらは木瓜の花 岡田由季
ビル解体掴み出される管と虹 箱森裕美
荒梅雨や肉屋が肉を解体し 大木あまり
秋の雨何か解体して瓦傑 山口優夢
週明けに菊人形を解体す ハードエッジ
小鳥来る解体される給水塔 倉田有希
冬
脱色で叶う金髪翁の忌 ハードエッジ ←誤用発覚/11.3
修正版：
脱色で叶ふ金髪翁の忌 ハードエッジ
応募締切が 5.31
作句は締切間際の 5.27
それでも何回も読み返したつもりなのに、、、
しかも、冷却期間を置いて、
10 月になって葉書俳句の制作でも読み返したハズなのに、、、
しかも、しかも、
今回の50句の中でも1-2番の自信作だったのに、、、
他人様の粗探しは得意なのに、
足元が疎かになってました
既に郵送した分は次回で正誤告知
11.9 以降の手配り分は、これから全数手書き修正/11.3
叶ふ：
年々や桜にかなふ髪の白 西嶋あさ子
あたらしき眼鏡にかなふ五月富士 角和
枯園や神慮にかなふ薔薇一つ 中田みづほ
叶ふなら笛方が良し今日の月 岡本眸
叶ふこと叶はざること冬に入る 岩岡中正
冬虹のいま身に叶ふ淡さかな 飯島晴子
一画家の望みに叶ふ紙を漉く 森田峠
鷲鼻の重次にかなふ冬帽子 佐野聰
顔見世にかなふ寒さとなりにけり 佐藤佐登子
身の老いにかなふさむさや切山椒 久保田万太郎
小春日の象を見てゐる背中かな ハードエッジ
背中：
太陽の塔の背中の顔も春 山田弘子
遅々と翅ひらけば蝶の背中ある 依光陽子
怪獣の背中が割れて汗の人 加藤静夫
木曽殿と背中合わせの寒さかな 島崎又玄
そこな人破魔矢で背中掻くと見ゆ 岩田由美
鳩つひに鷹の姿に戻る冬 ハードエッジ
戻る：
修司忌や光の戻る映画館 澤田和弥
白髪にもならでもどるや鉾の児 羅川
蟻の巣に埃被りし蟻戻る 大西朋
でで虫のごくりともどる殻の中 大石雄鬼
白紙へと戻る術なき古日記 ハードエッジ
甲板に寒風すさぶ空母かな ハードエッジ
甲板：
人動きやまずよ海霧の甲板に 高濱虚子
甲板はや灯りぬ梅雨の航つゞく 高濱年尾
甲板に振りしハンカチ今たたみ 深見けん二
甲板に今日愉しまむビール乾す 西村和子
星涼し遊歩甲板の籐椅子に 岸風三楼
甲板を一廻りして籐寝椅子 ハードエッジ
白息で窓の指紋を浮き立たせ ハードエッジ
指紋：
みえねども指紋あまたや種袋 小宅容義
初蝶に指紋のこさぬやうに触る 仮屋賢一
玻璃に亡き母の指紋や朝ざくら 中拓夫
わが指紋とどめはるかへ黒揚羽 片山由美子
押しピンの指紋の跡の錆びて秋 清水良郎
短日や窓に母待つ子の指紋 佐藤郁良
蒟蒻を買ひ忘れたるおでんでも ハードエッジ
蒟蒻：
蒟蒻はとわにふるえて春の雪 池田澄子
駅弁の黒きこんにやく雁渡し 桂信子
蒟蒻の白と黒とが秋水に 辻桃子
こんにやくの四角三角初しぐれ 中嶋秀子
蒟蒻の効能を説くおでん酒 ハードエッジ
火を焚きてゐしが蒟蒻掘りに散る 宮津昭彦
新年
ＰＣの余力仕事や去年今年 ハードエッジ
余力：
余力なほ保ち大文字消えんとす 菖蒲あや
走り来て白息といふ余力あり 風間圭
乗初の女車掌の指差称呼 ハードエッジ
車掌：
遠足の子らが覗ける車掌室 中本真人
教官も乗つて四月の新車掌 ハードエッジ
たんぽぽの絮吹いてをる車掌かな 奥坂まや
長き夜の夜行列車の車掌かな ハードエッジ
座布団持ち車掌交代秋の山 相子智恵
吹雪の中車掌の声がきて美し 秋元不死男
雪が降る車中につよき車掌の脚 寺田京子
雪の話してゐて車掌と運転手 森田公司
後尾にて車掌は広き枯野に飽く 小川双々子
初詣帰りの笑ひ声と会ふ ハードエッジ
笑ひ声：
ぶらんこの子の悲鳴めく笑ひ声 中本真人
磯かまど女ばかりの笑ひ声 渋沢渋亭
バレンタインデー吹替の笑ひ声 岡田由季
世の中は桜が咲いて笑ひ声 正岡子規
闇涼し川の向ふの笑ひ声 正岡子規
夕立や橋の下なる笑ひ声 正岡子規
更によし春待つ門の笑ひ声 尾崎紅葉
寝て出来ることの最たる寝正月 ハードエッジ
最たる：
愛鳥の週に最たる駝鳥立つ 百合山羽公
着ぶくれの中の最たる裘 ハードエッジ
雪よごれ最たるものに雪だるま 鷹羽狩行
冬
長き枝のぶらさがりたる枯木かな ハードエッジ
ぶらさ：
涼しさや縁より足をぶらさげる 各務支考
すゝしさや足ぶらさげる水の中 正岡子規
揚羽蝶おいらん草にぶら下る 高野素十
老鶏の蟇ぶらさげて歩くかな 飯田蛇笏
ぶらさげて青大将の長さ見す 成瀬正俊
昼飯をぶらさげて居るかゞし哉 小林一茶
稲運びあきし子稲架にぶらさがる 高野素十
瓢箪になれず糸瓜のぶら下る ハードエッジ
へうたんとなつて天下にぶら下る ハードエッジ
ふるへつつ小屋の兎は抱かれけり ハードエッジ
小屋：
春雪に落城したり乞食小屋 森川許六
炬燵して公魚釣の小屋といふ 清崎敏郎
山藤や硫黄商ふ山の小屋 芥川龍之介
ボート小屋ボートとともに塗りかへぬ 加藤三七子
雨あがるまでのにぎはひ登山小屋 阿部子峡
山小屋の床下の管音たつる 松野苑子
舟小屋のうしろ日蔭の花南瓜 上村占魚
ひるすぎの小屋を壊せばみなすすき 安井浩司
襟巻や鶏小屋荒したる末の ハードエッジ
芝居小屋からうつくしき火事になる 山口優夢
兎小屋当番の子の着膨れて ハードエッジ
鶏小屋に朝の挨拶寒卵 ハードエッジ
寒天小屋隙間だらけの戸が重し 大橋敦子
クリスマス馬小屋ありて馬が住む 西東三鬼
犬小屋に扉のなくてクリスマス 土生重次
穴釣の釣場を移る小屋曳きて 根岸善雄
コートなら純白が良し雪の木々 ハードエッジ
純白：
純白の蝶が群がる時計の裏 有馬朗人
白木蓮に純白といふ翳りあり 能村登四郎
滝壺に晒して瀑布純白に ハードエッジ
純白の服もて日焼子を飾る 林翔
山百合の純白守り抜く香なり 廣瀬町子
花野来て夜は純白の夜具の中 岡本眸
純白を秘めし白粉花の種 ハードエッジ
崖さむし海鵜の糞の純白に 矢島渚男
純白で私を避ける雪ばかり 櫂未知子
街に雪この純白のいづくより 橋本榮治
命終や埋火のこの純白は ハードエッジ
純白の手袋も買ひそろへたる 西村和子
マスク純白音大前の停留所 小池義人
冬眠の或いは永遠に安らかに ハードエッジ
安らか：
やすらかにうすら氷うかぶ日蔭かな ハードエッジ
花にまだ間のある寝釈迦やすらかに ハードエッジ
やすらかに死ねさうな日や濃山吹 草間時彦
梅雨眠し安らかな死を思ひつゝ 高濱虚子
夏掛や母のほとりに安らかに 長谷川櫂
やすらかやどの花となく草の花 森澄雄
かまど火はいつも安らか山枯れても 大野林火
山眠る裾野も共に安らかに ハードエッジ
荒草の今は枯れつつ安らかに 日野草城
枯芭蕉俳諧安らかに眠れ 福田若之
寒禽の種蒔く尻と思ふなり ハードエッジ
寒禽：
寒禽に生きよと赤き実ありけり ハードエッジ
寒禽のこゑ聞いてをり籠の鳥 利普苑るな
寒禽の嘴をひらきて声のなき 長谷川櫂
寒禽の取り付く小枝あやまたず 西村和子
寒禽の寺にアルミの梯子照り 本宮哲郎
枯れ果てしものに隠れて春を待つ ハードエッジ
隠れて：
菜の花やみんな隠れて鬼ひとり 外山節子
雨戸繰り蚊帳に隠れて雷を聞く ハードエッジ
蓮見船は蓮に隠れて翡翆飛ぶ 正岡子規
蘆原に隠れて蘆を刈る人ぞ 長谷川櫂
色鳥のかくれて見えぬ廂かな 高濱虚子
おしろいのはなにかくれてははをまつ 恩田侑布子
夜の蘭香にかくれてや花白し 与謝蕪村
土は土に隠れて深し冬日向 三橋敏雄
白息の花にかくれて花売女 土生重次
水鳥の葦に隠れて生む水輪 日野草城
綿虫や隠れてさみしかくれんぼ 磯部とみ子
凹凸に雪にかくれて落椿 上野泰
心臓と肺の押し合ふ春隣 ハードエッジ
心臓：
心臓をあまた蔵して雲の峰 ハードエッジ
暑気中もともとずれている心臓 綱長井ハツオ
裸子が心臓ひとつ持て逃ぐる ハードエッジ
化石にも心臓ありぬ夜の薔薇 神野紗希
心臓は何の実ならん鷹渡る 丸田洋渡
青虫のその心臓も青ならむ ハードエッジ
闇汁に心臓一つ四つ割りに ハードエッジ
獅子舞の心臓ふたつもて怒る 大石雄鬼
◎初案５０句
春の句は肩の力を抜いてこそ ハードエッジ
始球式ほどの歓声春立てり ハードエッジ
風船のヘリウム・アルミニウムかな ハードエッジ
校門を遠足バスの高みより ハードエッジ
虚子の忌の溢るる花を惜みなく ハードエッジ
古寺の寄進の瓦囀れり ハードエッジ
籠よりも遥かに狭き巣箱かな ハードエッジ
恋の猫大きな虹を引きずつて ハードエッジ
花を詠む先句幾万あらうとも ハードエッジ
大衆の通俗の夏来りけり ハードエッジ
火をふたつ重ねて炎炎天下 ハードエッジ
現実と戦つてゐる西日かな ハードエッジ
押し寄せる未来の如く氷河崩ゆ ハードエッジ
扇風機内蔵の服膨らめり ハードエッジ
水を出て水にあらざる心太 ハードエッジ
蜜豆と冷し中華の色が似て ハードエッジ
海と山少しずらして開きけり ハードエッジ
戦後すぐの若き句集を曝すなり ハードエッジ
週明けや祭の塵も少し出す ハードエッジ
鮎を取るにもいろいろと鳥までも ハードエッジ
蟬の穴黄泉の国から逃れ来し ハードエッジ
材木の杉や檜や花は葉に ハードエッジ
飛ぶ鳥に若葉の木あり蛇ひそむ ハードエッジ
黴臭き部屋のひんやりしてをりぬ ハードエッジ
十薬を抜きしばかりの塀にほふ ハードエッジ
湖は大きな鏡秋の雲 ハードエッジ
釣り糸を垂れて静かな天の川 ハードエッジ
解体のビルの階段春の雨 ハードエッジ
今年から弟もゐる運動会 ハードエッジ
敬老日死後の未来の果てしなく ハードエッジ
人形は老いず菊人形は枯れ ハードエッジ
南瓜硬し煮ればたちまちやはらかし ハードエッジ
毒茸耳の形はしてをらず ハードエッジ
天高く鳩次々に鷹と化す ハードエッジ
小春日の象を見てゐる背中かな ハードエッジ
心臓と肺の押し合ふ春隣 ハードエッジ
枯れ果てて朽ち果てて土春を待つ ハードエッジ
原子力空母寒風吹きすさぶ ハードエッジ
枯木に雪暖かさうな寒むさうな ハードエッジ
年用意窓の指紋も見逃さず ハードエッジ
蒟蒻を買ひ忘れたるおでんでも ハードエッジ
脱色を掛けし金髪翁の忌 ハードエッジ
抱かれてふるへやまざる兎かな ハードエッジ
冬眠に老いたるものは覚めずとも ハードエッジ
寒禽の種蒔く尻が飛んでゆく ハードエッジ
冬木の枝少し太きが折れてをる ハードエッジ
ＰＣのクロック自在去年今年 ハードエッジ
寝て出来ることの最たる寝正月 ハードエッジ
初乗の女車掌の指差称呼 ハードエッジ
初詣帰りの笑ひ声と会ふ ハードエッジ
◎推敲一覧/pdf
ここでは最終稿とその推敲分を記載
全３６４句/７枚
俳壇賞 2024 プランＣ 推敲句一覧
◎Ａ４推敲 原稿/pdf
全３９枚
俳壇賞2024 プランＣ Ａ４推敲 原稿
◎Ａ４推敲 加筆/pdf
全３９枚
俳壇賞2024 プランＣ Ａ４推敲 加筆
◎葉書俳句表側
◎データベース画面/桐v10
◎落選葉書一覧リンク
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