年末 【賀状書く】 悪筆を吉例として賀状書く

全然堂歳時記 年末の部
【賀状書く】がじょうかく

全然堂歳時記=現在、本号を含め99記事=春夏秋冬–年末年始=29-21-21-19–5-4
/2023.12.24

 

◎葉書俳句

 

 

◎テキスト

賀状るその一日いちにちを楽しみに ハードエッジ

楽しみに:
かせぎ居り春の歌舞伎座たのしみに 伊藤たか子
庭芝を焼く少しづつたのしみに 池内たけし
豌豆摘む母の日を母たのしみに 大熊輝一

色に分け色をかさねて賀状る ハードエッジ

色を重ね:
海陸の暮色を重ね流灯会 鷹羽狩行
ひと雨の色を重ねし枯野かな 木内怜子

賀状書くそのたかわらの住所録じゅうしょろく ハードエッジ

傍らに:

よく眠る子をかたはらに朝寝かな 鶴岡加苗
傍らに人無き如く梅にあり 高濱虚子

虹仰ぐ見知らぬ人のかたはらに 片山由美子
母あらばその傍らに昼寝せん ハードエッジ

かたはらに夜食代りのチョコレート ハードエッジ
かたはらに生簀の騒ぐ観月会 大野林火
蛇口あり菊人形の傍らに 奥坂まや
傍らに子の眠りゐる夜なべかな 岡安仁義
鵙の贄木瓜の實となるかたはらに 高屋窓秋

冬ごもり眠れる龍のかたはらに 長谷川櫂
かたはらを過ぎゆく冬至クリスマス 相馬遷子
人参のかたはらにある大根かな ハードエッジ

傍らに人無き如く初笑 高濱虚子

悪筆あくひつ吉例きちれいとして賀状書く ハードエッジ

悪筆:
悪筆でありし入学保証人 亀田虎童子
悪筆をこの頃恥ぢず鴨足草 草間時彦
良きことを悪筆で書く初日記 ハードエッジ

年賀状書きつつ思ふ今年かな ハードエッジ

今年かな:
やや小さき蟇の来てゐる今年かな ハードエッジ
来年も吹く秋風の今年かな ハードエッジ
短日の変り映えなき今年かな ハードエッジ
寝返れば去年がころりと今年かな ハードエッジ
雪の上に雪新しき今年かな ハードエッジ
太箸の太きをもつて今年かな ハードエッジ
三が日に日曜のある今年かな ハードエッジ

筆を止め筆を止め書く年賀状 ハードエッジ

止&止:
雨降つて止み降つて止み春深し 稲畑汀子
風止んで時の止りし桜かな ハードエッジ
矢車の止りいくつも止りをり 中村汀女
秋雨止みその後長く止んでゐる 加倉井秋を
咳の止む時さへ喉の鳴り止まず ハードエッジ

賀状書くホテルの窓の夜景やけいかな ハードエッジ

夜景:
香水に叶う夜景と男かな 角田信子
町内の夜景を眺め缶ビール 鶴岡加苗
いみじくも漁火の夜景や避暑の宿 鈴木花蓑
バス発ちて寒き夜景に加はれる 髙柳克弘
二階には二階の夜景クリスマス 鷹羽狩行

すみの中に賀状を書き並べ ハードエッジ

墨の香:
墨の香や夜空の中の雪解富士 宇佐美魚目
墨の香や奈良の都の古梅園 夏目漱石
墨の香の梅の香の中菓子給ふ 石川桂郎
紅梅や佳き墨おろす墨の香と 水原秋櫻子
墨の香や探梅の日を心待ち ハードエッジ

アカサタナまでは書き終へ年賀状 ハードエッジ

書き終:
天の川ながき手紙を書き終る 山口波津女
逝きし友まだ無し賀状書き了る 利普苑るな
賀状書き終へて賀状の嵩を見る 塩川雄三
年賀書き終へて再び筆不精 稲畑汀子

わが名書くことにもみつ賀状書く ハードエッジ

倦み:
永き日の生簀に倦みて跳ねしもの 鷹羽狩行
秋晴に倦み一片の雲を産む 鷹羽狩行

夜更よふかしの煮豆にまめがすな賀状書き ハードエッジ

年の暮の豆:
黒豆に照りをやりたる年の果 辻桃子

ええい、ままよと賀状書くに湯ざめして ハードエッジ

湯冷めと手紙:
湯ざめしてなほ書きつづけゐる手紙 岩崎照子

少しづつ減りゆく宛名あてな賀状書く ハードエッジ

宛名:
文は母宛名は父の梨届く 玉作奈々緒
年賀状亡き父母の宛名欲し 増田河郎子

行く年のポストの中の年賀状 ハードエッジ

ポストの中:
寒星や出した手紙はまだポスト 内田美紗

 

 

◎初案13句

 

 

◎推敲過程/テキスト/pdf

全133句/3枚

全然堂歳時記 年末【賀状書く】テキスト推敲

 

 

◎A4推敲 原稿/pdf

なし

 

 

◎A4推敲 加筆/pdf

なし

 

 

◎葉書推敲 原稿/pdf

全12枚

全然堂歳時記 年末 【賀状書く】葉書推敲 原稿

 

 

◎葉書推敲 加筆/pdf

全12枚

全然堂歳時記 年末 【賀状書く】葉書推敲 加筆

 

 

◎葉書俳句表側

 

 

◎データベース画面/桐v10

 

 

◎賀状書く秀句

賀状書くけふもあしたも逢ふ人に 藤沢樹村
一枚目なかなか書けぬ賀状かな 松岡水学
うつし身の逢ふ日なからむ賀状書く 渡辺千枝子
かにかくに生きて賀状を書けるとは 中上照代
賀状書くなんだかんだと生きてゐて 皆川光峰

世のつねに習ふ賀状を書き疲る 富安風生
賀状書くわれより若き人へ人へ 林翔
賀状書き(く)心東奔西走す 嶋田摩耶子
好きな人めつきり減りし賀状書く 上田五千石
賀状書く淡き縁もよからずや 山田弘子

まだ賀状書ける幸せ米寿来る 高村令子
賀状千喪中葉書も五十ほど 鷹羽狩行
病む夫を襖に隔て賀状書く 飯野てい子
賀状をば書かじと決めて安からず 相生垣瓜人
賀状書く手を止めて聞く夜の雷 舛田初惠

高橋も髙橋もゐて賀状書く 青木ともじ
賀状書くわが旧姓のおとうとへ 内田美紗
美しき名の誰かれへ賀状書く 片山由美子
その地名読めぬまま書く賀状かな 照屋眞理子
年賀状亡き父母の宛名欲し 増田河郎子

一つ灯を妻と分け合ひ賀状書く 高村寿山
賀状書くしみじみ妻と二人して 楠本憲吉
逝きし友まだ無し賀状書き了る 利普苑るな
年賀状遠き友より書きはじむ 田中藤穂
賀状書くや心の友の面知らず 林翔

会はざれば友みな若し賀状かく 平野伸子
賀状書煮豆とろ火の火の加減 川原典子
クリスマスケーキ傍へに賀状書く 鎌倉喜久恵
賀状投函村のポストをひびかせて 渡辺柳風
賀状書き一枚ごとの嵩を積む 大橋敦子

賀状書き終へて賀状の嵩を見る 塩川雄三
新住所やうやく馴染み賀状書く 原島悦子
食卓で事足り百の賀状書く 西村摩耶子
宿題に手をつけるごと賀状書く 高澤良一
賀状刷るガリ版講師ただ多忙 芦沢一醒

 

 

◎未練句/補遺/在庫処理

ことことと煮豆は煮ゆる賀状書く ハードエッジ
厨にて黒豆煮つつ賀状書く ハードエッジ
昭の字の宛名減りたる賀状かな ハードエッジ

 

以上です