開発素句報 2022-01 「地下朧」
◎葉書俳句
◎テキスト
あたたかや歳時記「春」が平積に ハードエッジ
歳時記:
歳時記の始めは春や暖かし ハードエッジ
歳時記は秋を入れたり旅かばん 川崎展宏
歳時記に忌の字忌の字の冬に入る 林翔
歳時記は付箋に膨れ春を待つ ハードエッジ
歳時記の古きを開く淑気かな ハードエッジ
曇天の生みし華やぎ春の雪 ハードエッジ
華やぎ:
華やぎは通夜の家のみ藪椿 鷹羽狩行
虫干や形見ばかりが華やぎて 斎藤節子
はなやぎて月の面にかかる雲 高濱虚子
冬ぬくし老の心も華やぎて 高濱虚子
葬ありて根雪の村の華やぎぬ 斉田仁
夕方はすこし華やぎ雁木道 阿部静雄
一の酉夜空は紺のはなやぎて 渡邊千枝子
セーターの黒の華やぎクリスマス ハードエッジ
女湯のはなやぎ母と子の初湯 ハードエッジ
うすら氷が消えて明るい水たまり ハードエッジ
水たまり:
花冷えの浅くひろがる水たまり 長谷川櫂
佐保姫の手鏡ほどの潦 西脇はま子
春の雨止んでをらざる水たまり 抜井諒一
春雨やみなまたたける水たまり 木下夕爾
菜の花の中や大きな水たまり 岸本尚毅
若草や蹄のあとの水たまり 会津八一
屋上に潦あり天の川 池田澄子
植木鉢とズックが野分の水溜めて 川崎展宏
末枯の原をちこちの水たまり 高濱虚子
潦にごれるままに氷りけり 室生犀星
潦かはかんとして凍てにける 五十崎古郷
節分やきのふの雨の水たまり 久保田万太郎
帰り花のまつくらやみに潦 田中裕明
出初式終へて大きな水たまり 白石渕路
水たまり/自作:
春雪の残して行きし水たまり ハードエッジ
嘘のやうに晴れて花見の水たまり ハードエッジ
校庭に大きな花の水たまり ハードエッジ
菊の香に乾けば消ゆる水たまり ハードエッジ
吹く風や冬田に青き水たまり ハードエッジ
夜に氷り朝に割られて水たまり ハードエッジ
朝方は氷でありし水たまり ハードエッジ
水たまり氷だまりとなりにけり ハードエッジ
吹き溜る落葉の下の水たまり ハードエッジ
書に余る栞の尻尾春の雷 ハードエッジ
栞:
栞して山家集あり西行忌 高濱虚子
栞して本を眠らす夜の秋 片山由美子
夏の雲搭乗券を栞とす 谷さやん
手花火を栞に雨月物語 相生垣瓜人
梶の葉を朗詠集の栞かな 与謝蕪村
育児書の栞みづいろ小鳥来る 林昭太郎
読初の一書栞を深くせり 川畑火川
日本を少し広げて潮干狩 ハードエッジ
広げて:
春水に両手ひろげて愉快なり 高濱虚子
囀や両手広げて干すシーツ 林昭太郎
子のひたひ広げて玉の汗ぬぐふ 藤本夕衣
形代の袂ひろげて流れゆく 加藤三七子
秋彼岸袂ひろげて飛ぶ雀 川崎展宏
蓮の葉の巻くをひろげて盆供かな 草間時彦
水鳥の水輪ひろげて身づくろひ 鷹羽狩行
初雀翅ひろげて降りにけり 村上鬼城
海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり 寺山修司
広げて/自作:
絵日記の白を広げて日焼の子 ハードエッジ
白銀を打ち広げてや春の波 ハードエッジ
弁当を膝に広げて雲雀の野 ハードエッジ
ひろげてはあふぎてみては扇買ふ ハードエッジ
紫を絞り広げて花菖蒲 ハードエッジ
赤あげて横に広げて曼珠沙華 ハードエッジ
縦に広げ横に広げて絵双六 ハードエッジ
いくたびも作つてくれし草の餅 ハードエッジ
作つて:
春雨や作つてくれし卵焼 ハードエッジ
ごきぶりの家を作つてゐる静寂 小久保佳世子
地下鉄の地下に地下鉄地下朧 ハードエッジ
地下鉄:
竜天に昇る地下鉄の通気孔 鈴木きぬ絵
地下鉄を出れば銀座の春の雪 吉屋信子
地下鉄のぬるき風圧春うれひ 佐藤郁良
地下鉄の押し来る空気花疲 小川軽舟
猫の恋地下鉄郡部まで延びて 前山松花
地下鉄に窓あることを涼しとす 田島風亜
地下鉄にかすかな峠ありて夏至 正木ゆう子
地下鉄は青き火花を夜の秋 長谷川櫂
コクトー忌地下鉄の窓鏡なす 榮猿丸
地下鉄の入り口四角冬の風 今瀬剛一
牡蠣船に坐し地下鉄の工事音 右城暮石
地下鉄の最後尾にて年惜しむ 木村敏男
地下鉄も初日浴びゆく小石川 福島胖
地下鉄/自作:
長き長き地下鉄の闇猫の恋 ハードエッジ
地下鉄の使はぬ駅に螢舞ふ ハードエッジ
地下鉄が闇を押し行く赤い羽根 ハードエッジ
地下鉄が速くて便利義士祭 ハードエッジ
地下鉄で行く地下街のクリスマス ハードエッジ
地下鉄で参る浅草都鳥 ハードエッジ
この下を地下鉄通る落葉かな ハードエッジ
地下鉄は落葉の舞ふを知らざりき ハードエッジ
地下鉄の中に踏まるる落葉かな ハードエッジ
◎推敲過程/テキスト
開発素句報 2023-01 推敲 テキスト◎推敲過程/葉書加筆
開発素句報 2023-01 推敲 葉書◎葉書俳句表側
以上です