全然堂歳時記 新年の部
【初空】はつぞら/はつそら
全然堂歳時記=現在、本号を含め69記事=春夏秋冬–年末年始=21-9-17-16–3-3
/2023.1.10
本号より歳時記カテゴリーの旧版を別立にしました
子季語:初御空
目次
◎葉書俳句
◎テキスト
めでたさの観音びらき初御空 ハードエッジ
観音開き:
啓蟄の窓は観音開きかな 赤尾恵以
この秋は観音開きにて立てり 正木ゆう子
初空や大きく息を吸ひ込んで ハードエッジ
吸ひ込:
水門に吸ひ込まれゐる落花かな 西村和子
雲の峰吸ひ込まれゆく機影あり 稲畑汀子
香水や銀座の地下に吸ひ込まれ 稲畑廣太郎
日傘閉ぢつつ地下道へ吸ひ込まる 抜井諒一
葬列の吸ひ込まれゆく里若葉 鎌田保子
水門に萩を吸ひこむ流れ哉 正岡子規
浮ぶ麩の水を吸ひ込む寒さかな ハードエッジ
立ち上がる明度彩度や初御空 ハードエッジ
立ち上:
立ち上る珈琲の香や春の雪 ハードエッジ
立ち上がることを忘れて春の潮 黛まどか
塩入れて湯の立ち上がる半夏生 正木ゆう子
煙突や旱の地より立ち上る ハードエッジ
立ち上る一人に揺れて船料理 高濱年尾
サーファーの聖者のごとく立ち上がる 斉田仁
キヤンプより這ひ出でて立ち上りけり 青葉三角草
草取の膝をはたいて立ち上がる 中本真人
万緑に湯気立ち上る秘湯かな ハードエッジ
蟷螂が怒りに燃えて立ち上がる 相生垣瓜人
立ちあがる腰をこぼれて冬日かな 綾部仁喜
冬の浪炎の如く立ち上り 上野泰
玄関にブーツを履きて立ち上る ハードエッジ
青々と一気呵成の初御空 ハードエッジ
一気:
ある高さまでは一気に今年竹 片山由美子
降り出して一気に秋を呼ぶ雨ぞ 宮津昭彦
破芭蕉一気に亡びたきものを 西村和子
日本の誠の青を初御空 ハードエッジ
誠:
紫陽花やきのふの誠けふの嘘 正岡子規
青空は青の本懐初御空 ハードエッジ
本懐:
やや萎れ本懐成就菊人形 鷹羽狩行
本懐を遂げたる如き大嚔 ハードエッジ
本懐や鳥に食はれし木守柿 ハードエッジ
最速の青を極めて初御空 ハードエッジ
極めて:
白百合や色を極めて夜の底 松根東洋城
虎河豚の怒り極めてみどりの目 澤木欣一
青空は塵の恩寵初御空 ハードエッジ
恩寵:
目に見えぬ塩の恩寵豆御飯 ハードエッジ
純白の雲の喜び初御空 ハードエッジ
純白:
白木蓮に純白といふ翳りあり 能村登四郎
滝壺に晒して瀑布純白に ハードエッジ
純白の服もて日焼子を飾る 林翔
山百合の純白守り抜く香なり 廣瀬町子
花野来て夜は純白の夜具の中 岡本眸
純白を秘めし白粉花の種 ハードエッジ
崖さむし海鵜の糞の純白に 矢島渚男
街に雪この純白のいづくより 橋本榮治
純白で私を避ける雪ばかり 櫂未知子
狐火見し純白の夜を妊れり 齋藤愼爾
命終や埋火のこの純白は ハードエッジ
西洋の純白クリスマスケーキ ハードエッジ
一族の揃ふ庭園初御空 ハードエッジ
庭園:
庭園の昼のあはれや誘蛾燈 深見けん二
枯れ尽したる庭園へ入るに鍵 片山由美子
一杯の白湯の如くに初御空 ハードエッジ
白湯:
白湯甘く苦く酸つぱく春の風邪 馬場公江
白湯飲んで横になりたる水中り ハードエッジ
咳く人に白湯まゐらする夜寒かな 高井几董
白湯飲みし身のほのぼのと霜夜かな 大石悦子
白湯一椀しみじみと冬来たりけり 草間時彦
白湯の香や冬の弱日を力とし 大石悦子
埋火や白湯もちんちん夜の雨 小林一茶
白湯飲んで小便近し冬籠 ハードエッジ
雪の上に雪折れの松滾る白湯 宇佐美魚目
初御空羽あるものは飛びあがり ハードエッジ
飛び上:
嬉しくて飛び上りたる燕の子 ハードエッジ
飛び上る長き蛙や鵙の贄 ハードエッジ
飛び上る火は子狐の火なるべし 有馬朗人
飛びあがることなくスケート終へてお茶 野口る理
駆けて水駆けて水鳥飛び上る ハードエッジ
並びゐて背のびし跳び上がり初日 内村恭子
羽ばたかぬ硬き翼も初御空 ハードエッジ
羽ばたく:
吾を容れて羽ばたくごとし春の山 波多野爽波
翼あるものは羽ばたく山笑ふ ハードエッジ
羽搏くやまだ囀りの足らぬかに ハードエッジ
虫が飛び鳥が羽ばたく蝶の昼 ハードエッジ
花吹雪シーツも白く羽ばたくよ ハードエッジ
薫風やはばたくものは浮きあがり ハードエッジ
潮風にはばたく日傘ひらきけり 西村和子
軽鳧の子もはばたくやうなことをして 高田正子
羽抜鶏羽ばたくときの胸の張り 能村登四郎
羽抜鶏羽ばたくたびに痩せにけり 近藤一鴻
雪の上に跳ねて羽ばたく雀かな ハードエッジ
狩られても腸が羽搏く血が吹雪く 竹岡一郎
白鳥の羽ばたくは雪呼ぶごとし 片山由美子
高く飛ぶものはゆつくり初御空 ハードエッジ
高く飛:
蝶高く飛ぶや隣へ隣より 会津八一
ひろしまの忌日や高く飛べる蝶 原裕
飛行機の操縦室の初御空 ハードエッジ
飛行機:
風車もつて飛行機雲仰ぐ 久保田哲子
飛行機のちひさくひかり汐干狩 中嶋憲武
蛇穴を出れば飛行機日和也 幸田露伴
飛行機の遅々と飛びゐる麦の秋 京極杞陽
跣の子渚を飛行機走りして 西村和子
竹帚飛行機雲も秋の雲 川崎展宏
紙飛行機ひらきしうへで桃を剥く 大石雄鬼
音かすかなる飛行機や柳散る 岸本尚毅
飛行機に百の魂浮く冬の空 岡田一実
寒晴や飛行機がペン先のやう 龍野よし絵
飛行機のずしんと降りる枯野かな 長谷川櫂
飛行機の腹を観てゐる枯野かな C・ナイトヴェール
飛行機の中で肉食ふ漱石忌 遠山陽子
鴉より飛行機小さし初御空 ハードエッジ
飛行機/自作:
西へ伸びる飛行機雲や暮遅し ハードエッジ
行く春の紙飛行機の軽さかな ハードエッジ
お砂場のトンネルぶらんこの飛行機 ハードエッジ
飛行機はすつと蝶々はひらひらと ハードエッジ
長く引く飛行機雲や桜咲く ハードエッジ
飛行機呑んで虹を吐くなる雲の峰 ハードエッジ
飛行機は長き夜を行く孤独な灯 ハードエッジ
秋風に飛行機雲の乱れかな ハードエッジ
飛行機の次々飛べる聖夜かな ハードエッジ
遠近に飛行機の飛ぶ都鳥 ハードエッジ
初鴉その他雀も飛行機も ハードエッジ
初空に半透明の月かかる ハードエッジ
透明:
透明の傘に雨つぶチューリップ 福永鳴風
夕立の半透明をふりかぶる 宇多喜代子
焼酎の強き透明夜空晴れ 正木ゆう子
中也忌の透明傘の中の空 斉田仁
氷を提ぐ透明なれど重きらし 山口誓子
見るからにうまし全透明氷柱 山口誓子
パラボラや月より白く初空に ハードエッジ
国家とは大いなる家初御空 ハードエッジ
国家:
国家よりワタクシ大事さくらんぼ 攝津幸彦
気がつけば頭上に国家雪催ひ 仲寒蟬
君が代の太鼓の響き初御空 ハードエッジ
君が代:
君が代も二百十日は荒れにけり 正岡子規
講堂に菊の香満ちて君が代や 寺田寅彦
君が代も我家も無事に今朝の春 尾崎紅葉
◎推敲過程/テキスト/pdf
全2枚/84句
全然堂歳時記 新年 【初空】テキスト推敲◎推敲過程/A4印刷+手書き/pdf
略
◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf
葉書全8枚/A4-2枚
全然堂歳時記 新年 【初空】葉書推敲◎葉書俳句表側
◎データベース画面/桐v10
◎初空秀句
命より生まるるいのち初御空 鶴岡加苗
はつそらのたまたま月をのこしけり 久保田万太郎
初空に去年の星の殘りかな 正岡子規
初空にうかみし富士の美まし国 高濱虚子
初空の藍と茜と満たしあふ 山口青邨
身のうちに鈴あらば鳴れ初御空 黒崎かずこ
初御空とは良き言葉窓広く 岸本尚毅
パスポートひとりのこらず初空へ 岡崎陽市
初空のなんにもなくて美しき 今井杏太郎
初空や東西南北其下に 高濱虚子
一息にシャッター開ける初御空 鈴木牛後
富士といふ白帆を張つて初御空 牛田修嗣
初空やよくぞ鴉に生れたる 岸本尚毅
初空や初日初鷄初鴉 正岡子規
初空や烏は黒く富士白し 正岡子規
初空や日の本明くる櫻色 正岡子規
初空や月にもよらずさくらにも 太魯
◎未練句/補遺
初御空地球色とも言ふべかり ハードエッジ
初御空青美しく白眩し ハードエッジ
初空に国旗掲揚して眩し ハードエッジ
以上です