全然堂歳時記 冬の部
【短日】たんじつ
全然堂歳時記=現在、本号を含め66記事=春夏秋冬–年末年始=21-9-17-16–2-1
/2022.12.28
子季語:日短、短日、日つまる、暮早し、暮易し
目次
◎葉書俳句
◎テキスト
短日:
音読みはタンジツといふ短き日 ハードエッジ
短き日:
其頃の永き日この頃の短き日 高濱虚子
せはしなく暮れ行く老の短き日 高濱虚子
中年の今や短き日を重ね 日野草城
物干せば短き日なり竹の竿 巖谷小波
日短:
ジッタンに非ずひみじかとぞ読めり ハードエッジ
読めり:
さくらえびさくらびえとも読めりけり ハードエッジ
入れ替へてみても短日、日短 ハードエッジ
入れ替:
追ふ蝶と追はるる蝶の入れ替はる 岡田由季
正午とは梅林表裏入替はる 後藤立夫
青田風とは絶えまなく入れ替はる 草深昌子
金魚玉ときどき金魚入れ替へて ハードエッジ
風鈴が残りねえやが入替る 仁平勝
入れ替りその空蝉に入りしもの ハードエッジ
明日は死ぬ寒鮒の水入れ替へる 桂信子
寒梅の日向に人の入れ替はる 村上鞆彦
言葉さへ躓くやうに日、みじか ハードエッジ
躓く:
子遍路のわらぢが可憐躓くな 佐野まもる
キャンプ場つまづくものの多かりし 稲畑汀子
短日や兎つまづく木の根っこ 龍岡晋
わが露路でつまづく寒に入りにけり 菖蒲あや
走り根につまづくことの山始 福永耕二
一年の尻尾の如き短き日 ハードエッジ
尻尾:
振つてみる尻尾もなくて春愁 ハードエッジ
まさか蛙になるとは尻尾なくなるとは 池田澄子
ふさふさの尻尾のごとき毛虫かな ハードエッジ
頭から尻尾にかけて蛇長し ハードエッジ
鵙の贄長き尻尾を垂れにけり ハードエッジ
数へるにしても短日ばかりなり ハードエッジ
数へる:
声にして数を数へる桜貝 ハードエッジ
数へ日の数へるまでもなくなりぬ 鷹羽狩行
大いなる山を眠らせ日短 ハードエッジ
眠らせ:
乳房たのし子猫をあまた眠らせて ハードエッジ
PCを眠らせ果つる夜業かな ハードエッジ
三方に名のある山を眠らせて ハードエッジ
大いなる熊を眠らせ山眠る ハードエッジ
味噌樽に味噌眠らせて鬼は外 辻桃子
しんしんと赤子ねむらせ雪見舟 田中裕明
母なる地窪に枯葉を眠らせて 林翔
一年を省みるにも日の短か ハードエッジ
行く年を惜しみ短日を嘆くなり ハードエッジ
嘆くなり:
返り花日の短きを嘆くなり ハードエッジ
一億二千万人の短き日 ハードエッジ
短日の人の消え行く映画館 ハードエッジ
消え行:
菜の花の消えゆくごとく実となりぬ 山口青邨
今生の汗が消えゆくお母さん 古賀まり子
肉の傷肌に消えゆくねむの花 鳥居真里子
水鳥や夕日きえゆく風の中 久保田万太郎
消え行/自作:
古びたる白の消えゆく雪解かな ハードエッジ
花びらの砂に消えゆく桜貝 ハードエッジ
金山の金の消えゆく桜かな ハードエッジ
夕焼の中に消えゆく夕日かな ハードエッジ
夕焼に消えゆく夕日また明日 ハードエッジ
行く秋は消え入るやうに消え行けり ハードエッジ
輝いて過去の消えゆく流れ星 ハードエッジ
真中の先に消えゆく花火かな ハードエッジ
消えゆくや初雪の名を賜りて ハードエッジ
短日の塩壺と塩まみれの手 ハードエッジ
塩壺:
母の日や塩壺に「しほ」と亡母の文字 川本けいし
塩壺に塩米櫃に米春を待つ 菖蒲あや
葱細く大根太く日短 ハードエッジ
短日や輪ゴム二重にして堅し ハードエッジ
輪ゴム:
アスパラガスとめる輪ゴムの緑なる 清水良郎
日に焼けし手くびに輪ゴムそんな主婦 京極杞陽
動力は輪ゴム三本夏休 齋藤朝比古
虫干の手紙の束や輪ゴム切れ ハードエッジ
八月や文を括れる輪ゴム溶け 小川春休
秋の日の輪ゴムねじれているばかり 及川真梨子
枯草と同じ色して輪ゴムの輪 ハードエッジ
年賀状二枚だけでも輪ゴムして 北大路翼
年賀状束ねて輪ゴム細くなる 金子敦
短日やどんなに晴れてゐる空も ハードエッジ
晴れてゐ:
晴れてゐなければ夏山とは言へず 今井杏太郎
秋の空晴れてゐるとは限らない ハードエッジ
短日のせめては夕焼色を濃く ハードエッジ
短日を詫びるが如くビル灯る ハードエッジ
ビルの灯:
社名の灯消えたるビルの夜長かな 中本真人
霧深く山を覆ひぬビル灯る 阿部みどり女
同士めく隣のビルの夜業の灯 吉岡朋子
工事ビルネットの中に夜業の灯 篠田悦子
歳末のビルに灯ともる美容院 吉屋信子
短日の終点にゐる電車かな ハードエッジ
終点:
終点は町のまんなか黄砂降る 古川朋子
終点はぶらんこのある寺の前 ハードエッジ
点線の終点は点秋の暮 ハードエッジ
行く秋のバス終点の出湯かな ハードエッジ
短日や終点のその先の車庫 ハードエッジ
大学構内バスの終点日脚伸ぶ 斉田仁
去る者は追はず短き日なりけり ハードエッジ
去るもの:
去るものは追はず卒業式終る ハードエッジ
去るものは日日に疎しや更衣 福田蓼汀
去るもの日々にうとからず盆の月 久保田万太郎
去るものは日々に疎しや春を待つ 高野素十
去るものは日々に疎しよ鴨も人も 安住敦
短日の寒さなんぞと言はれけり ハードエッジ
何ぞ:
蚯蚓鳴くなんぞ人泣くをとがむるや 山口青邨
河馬の背のごときは何ぞおでん酒 上田五千石
鯨切るや梯子なんぞを取散らし 野村喜舟
◎推敲過程/テキスト/pdf
A4全3枚/151句
全然堂歳時記 冬 【短日】テキスト推敲◎推敲過程/A4印刷+手書き/pdf
略
◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf
葉書全7枚/A4-2枚
全然堂歳時記 冬 【短日】葉書推敲
◎葉書俳句表側
◎データベース画面/桐v10
◎短日秀句
日沈む方へ歩きて日短 岸本尚毅
人間は管より成れる日短 川崎展宏
減れば買う塩味噌醤油日短か 池田澄子
めッきりと蠅もへり日もつまりけり 久保田万太郎
其頃の永き日この頃の短き日 高濱虚子
せはしなく暮れ行く老の短き日 高濱虚子
あたたかき日は日短きこと忘れ 後藤比奈夫
短日やされどあかるき水の上 久保田万太郎
短日のかかるところにふとをりて 清崎敏郎
船宿の名が電柱に日短 岸本尚毅
自転車にちりんと抜かれ日短 齋藤朝比古
短日の三時四時五時六時かな 杉田菜穂
くつつきし磁石の意地や日短か 髙柳克弘
甘辛き匂ひの路地や暮早し 佐藤郁良
短日やばた~閉すみやげ店 五十嵐播水
よらでゆく島に手を振る日短か 吉屋信子
短日やたのみもかけずのむくすり 中村伸郎
もう雨戸締めねばならず日短か 吉屋信子
◎未練句/補遺
短日の日々や今年も後少し ハードエッジ
短日や齢ばかりを積み重ね ハードエッジ
短日や橋で繋がる隣町 ハードエッジ
荒波の連絡船や日短か ハードエッジ
行く人はみな短日の人ばかり ハードエッジ
短日の人短日の家の中 ハードエッジ
短日の人を放てり町の中 ハードエッジ
短日と言へりつくづく短き日 ハードエッジ
簡潔に短日といふ短き日 ハードエッジ
短日の早も暮れ行く濃紫 ハードエッジ
日も人も急かるるままに日短 ハードエッジ
短日の人短日の人を訪ふ ハードエッジ
短日や海なき奈良の都にも ハードエッジ
短日の窓口といふ小窓かな ハードエッジ
以上です