冬 【大根】 大根を抜いて鍛へし腕とも

全然堂歳時記 冬の部
【大根】だいこん/だいこ

全然堂歳時記=現在、本号を含め62記事=春夏秋冬–年末年始=21-9-17-12–2-1
/2022.12.3

 

◎葉書俳句

◎テキスト

根つからの大根畑だいこばたけでありにけり ハードエッジ

根つから:
根つからの空想好きの懐手 上田日差子うえだ ひざし

大根の白をはぐくむ緑の葉 ハードエッジ

育む:
このしお真珠しんじゅはぐゝむ春のやみ 楠目橙黄子くすめ とうこうし
骨が血をはぐくむ夜のさくらかな 藤田湘子ふじた しょうし
蝙蝠こうもりを育むメフィストのマント ハードエッジ
水飲んで子種育む銀河かな 加藤静夫
やがて日のしずくはぐくむ草氷柱くさつらら 三田きえ子
枯れきつて育む命ありにけり 西宮舞にしみや まい
数ふるははぐくむに手毬唄てまりうた 片山由美子

大根は寒さの冬にかた出して ハードエッジ

肩出し:
肩出して大根青し時雨雲しぐれぐも 前田普羅  ふら
肩出してゐる水餅みずもちのふとあわれ 後藤比奈夫  ひなお
畑大根皆肩出して月浴びぬ 川端茅舎かわばた ぼうしゃ

清白すずしろと書いてもみたき大根かな ハードエッジ

大根を抜きつ大根抜かれつつ ハードエッジ

「抜きつ抜かれつ」の洒落だが、
フィニッシュの「つつ」が残念

大根もその抜け穴もれてをる ハードエッジ

抜け穴:
抜穴のごとく鏡やひなおさめ 赤松蕙子あかまつ けいこ
大空の抜け穴小鳥来たりけり 行方克巳なめかた かつみ

あな暗し大根ぬきたる大根畑だいこばた ハードエッジ

掛詞!

大根を抜かれし畑のみだれかな ハードエッジ

乱れかな:
海見えてきし遠足の乱れかな 黛執まゆずみ しゅう
秋風に飛行機雲の乱れかな ハードエッジ
曼珠沙華まんじゅしゃげ枯れゆくかみの乱れかな ハードエッジ

大根を抜いてきたへしかいなとも ハードエッジ

鍛へし:
声は皆山に鍛へし盆踊ぼんおどり 加藤知世子かとう ちよこ

流れ行く大根もありおどろきぬ ハードエッジ

本歌取り:
流れ行く大根の葉の早さかな 高濱虚子たかはま きょし

流れ行:
の曲りなぞりてひなの流れゆく 山口誓子   せいし
流れゆくすみ行方ゆくえ光悦忌こうえつき 石寒太いし かんた
根を上に倒木とうぼく流れゆく出水でみず 鷹羽狩行たかは しゅぎょう
料理くず流れ行くあり船料理ふなりょうり 高濱虚子たかはま きょし
わが川床の下を団扇うちわの流れゆく 高野素十    すじゅう
形代かたしろたもとひろげて流れゆく 加藤三七子
ほのかにもうずながれゆく夜光虫やこうちゅう 橋本多佳子
砂の如き雲流れ行く朝の秋 正岡子規  しき
新涼しんりょう回廊かいろうそう流れゆく 高瀬祥子
朝霧あさぎりが改札口を流れゆく 西村和子
道頓堀どうとんぼりくつ流れゆく敗戦忌はいせんき 木田千女きだ せんじょ
流れゆく雲へ矢を向け菊人形 金子敦 か ね こ  あつし
流れゆく煙の影が鶏頭けいとうに 藺草慶子いぐさ けいこ

流れ行/自作:
流れ行くひなに持たせし桜貝 ハードエッジ
流れ行く吉野熊野よしのくまのせりの水 ハードエッジ
流れ行く時に落花らっかの限りなし ハードエッジ
流れゆくやみぐわうぐわうと螢籠ほたるかご ハードエッジ
流れ行く水輪の数も秋の暮 ハードエッジ
流れゆく夜長の川の平らかな ハードエッジ
流れ行く夜霧よぎりれて列車待つ ハードエッジ
澄む水に落ちたる虫の流れ行く ハードエッジ
流れ行く川を見てゐる雪だるま ハードエッジ

尾のごとれて荷台の大根の葉 ハードエッジ

荷台:
トラックの荷台が売場農具市 佐藤たみえ
秋晴のサイクリング車荷台なし ハードエッジ
冬のらいダンプ荷台の逆さ立ち 川村三千夫
生の火を荷台に積んで焼芋屋やきいもや クズウジュンイチ

軽トラの身を大根でうずめけり ハードエッジ

本歌取り:
生馬いきうまの身を大根でうづめけり 川端茅舎かわばた ぼうしゃ

健気けなげなりコンクリートも大根も ハードエッジ

健気:
夕立中健気なる灯の点りむ 高澤良一たかざわ よしかず
秋風や負けてもけなげ名寄岩なよろいわ 久保田万太郎 く ぼ た  まんたろう
健気なり稚木わかぎの柿も実をかかげ 日野草城    そうじょう
蔦紅葉つたもみじけなげに登りつめにけり 阿波野青畝あわの せいほ
健気にも種子を固守こしゅせる蜜柑みかんあり 相生垣瓜人あいおいがき かじん

大根があれば何とか成りさうな ハードエッジ

何とか:
にな進むわれも何とかなるならむ 飯島晴子
煮凝にこごりやなんとかするとはどうするか 池田澄子

大根や輪切わぎ千切せんぎかつらき ハードエッジ

輪切:
人の世を輪切りにしたるの輪かな ハードエッジ
唐辛子とうがらし輪切にされて輪の赤き ハードエッジ
大根の輪切りのあっという間かな 小西昭夫

大根をすとんすとんと輪切わぎりかな ハードエッジ

すとん:
春昼しゅんちゅうやプリンすとんと抜け落る ハードエッジ
夏の浜すとんとげる服を着て 瀬戸優理子せと ゆりこ

大根に千六本せんろっぽんといふおごり ハードエッジ

奢り:
落日の奢りのあとの鉦叩かねたたき 友岡子郷
一茎いっけい一花いっかの奢り寒牡丹かんぼたん 川崎慶子
山寺は闇を奢りて除夜じょやかね ハードエッジ

ライオンは食はぬ大根我は食ふ ハードエッジ

食はぬ:
花くはぬ心たうとき蚕哉かいこかな 正岡子規
子燕こつばめの毛虫・蚯蚓みみずは食はぬらし ハードエッジ

油揚あぶらげ和布わかめも少し大根汁だいこじる ハードエッジ

お大根さめますよああありがたう ハードエッジ

 

◎推敲過程/テキスト/pdf

全枚2/86句

全然堂歳時記 冬 【大根】テキスト推敲

◎推敲過程/A4印刷+手書き/pdf

省略

◎推敲過程/葉書印刷+手書き/pdf

省略

 

◎葉書俳句表側

◎データベース画面/桐v10

◎大根秀句

大根にしみ入るやうにさとしけり 佐藤郁良さとう いくら
大根を水くしやくしやにして洗ふ 高濱虚子たかはま きょし
黒土の大根浮かす力かな 三宅みやけやよい
大根をわしづかみにし五六本 高濱虚子たかはま きょし
畑大根皆肩出して月浴びぬ 川端茅舎かわばた ぼうしゃ
大根の山に亀の子束子かな 若井新一
いななきてよき機嫌きげんなり大根馬だいこうま 高濱虚子たかはま きょし
生馬いきうまの身を大根でうづめけり 川端茅舎かわばた ぼうしゃ
痩馬やせうまの背にうづ高き大根かな 寺田寅彦    とらひこ
も老いぬなれも老いけり大根馬だいこうま 高濱虚子たかはま きょし
流れ行く大根の葉の早さかな 高濱虚子たかはま きょし

以上です