春立つや大暴投の始球式
大衆の通俗の原色の夏
脱色で叶ふ金髪翁の忌
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
公募展、涙の落選供養
春立つや大暴投の始球式
大衆の通俗の原色の夏
脱色で叶ふ金髪翁の忌
サイダーの甘き空缶籠に投ぐ
魚籠あげて澄む水抜けてしまひけり
春待つや紙石鹸のいい匂ひ
春暁の遠ざかりゆく始発駅
爽やかに翼を広げ滑空す
懐しき人になりたや日向ぼこ
今年はや娘十八むめの花
毛虫にも黒毛・栗毛の系図あり
日本のまことの青を初御空
磯遊び黒船を見し子らの裔
朝顔やその日その日を全力で
青竹の誉れ左義長仕る
白も黄も蝶は小さし黒揚羽
かの人もわれの賀状を読むころか
着膨れて亀の如くに顔を上げ
アテンション・プリーズと咲く紅薔薇
ぐびぐびとどびろく呑んでくちぬぐふ
暁闇を配達の子にお年玉
風船に連れ去られたる長き紐
推敲の果ての巨大な雲の峰
虫偏に非ざる虫もすいつちよん
梅漬けし功に賜る赤き爪
長茄子は寝そべるやうな長さなり
寝返れば去年がころりと今年かな
変換の挙式と出でし虚子忌かな
シュッと出る泡の石鹸若葉の夜
真空を自由落下の羽根布団
街も家も雛も一夜の焼夷弾
朝顔の朝の力の濃紫
子狸のこれは小さな腹鼓
子規の忌のへちま束子の軽きかな
関東や葱を真白に醤油濃し
胎の子に初湯加減を聞く夜かな
明るくて雲も浮んでみたき春
涼しさに住んでもみたき土星の輪
氷柱にはなれず平らに氷る水
ゴジラいま地球の味方花吹雪
爽やかに引きし補助線仮説成る
ティアラして雪のディズニーランドかな
虹の根を煎じて飲めと言はれけり
東京で見かけし電車夏の山
ことことと弱火のちから冬籠
打水をけふは神輿の男らに
子規の忌の糸瓜・鶏頭・柿の鐘
一堂に姫や坊主や歌留多会
縦横に水羊羹の詰め合せ
地下鉄が闇を押し行く赤い羽根
落葉道長き小枝を拾ひけり
初夏のガードレールの緑色
夜明けなり決死の蝉が穴を出づ
ほんまやなものの五分で蟻たかる
蝶が舞ふパンもケーキも無き寺に
蟻の道お天道様が見てをられ
きゆつと鳴く踏んで幼き霜柱
坂道を春一番の子が駆ける
開かれて鯵は干物に花は葉に
病院も駅も夜長の灯を点し
腰伸ばし見るや周りの潮干狩
ちらかつて庭うつくしや野分あと
手袋で好きな絵本を撫でてをる
ピストルの手入れ運動会前夜
蟷螂の怒りに燃ゆる緑色
紫も緑も黒も葡萄なり
涅槃絵図涙ながらに褪せゆくも
吾輩は西日に立てる赤い箱
呪文の如くチヨコレイトや露地の秋
天井に届く悲しみ涅槃絵図
さくらんぼ美しき血を絶やさずに
よく遊びよく学ぶべき秋のチョコ
妙齢の箸が転げて春の旅
風薫る本の中からその書評
大根があれば何とか成りさうな
もう一度子猫になつて会ひに来よ
健気なりコンクリートも大根も
着飾りて詩歌の国の歌留多会
あと一つ咲けば百なる白椿
筍や客人はまだ寝てをられ
柿たわわ日本の村の滅びつつ
花びらは箱根の山を越すつもり
行く年やいくたび鍋を囲みても
火の鳥の大いなるかな吉書揚
紅白の梅の匂へる神の里
塩辛に烏賊や鰹や夏始
ギター背に枯木の中を帰りけり
春昼の積木崩しの悲鳴らし
裸子の水に飛び込む水しぶき
月雪をさまよふ花の絵双六