白も黄も蝶は小さし黒揚羽
かの人もわれの賀状を読むころか
着膨れて亀の如くに顔を上げ
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
白も黄も蝶は小さし黒揚羽
かの人もわれの賀状を読むころか
着膨れて亀の如くに顔を上げ
アテンション・プリーズと咲く紅薔薇
ぐびぐびとどびろく呑んでくちぬぐふ
暁闇を配達の子にお年玉
風船に連れ去られたる長き紐
推敲の果ての巨大な雲の峰
虫偏に非ざる虫もすいつちよん
子規の忌のへちま束子の軽きかな
関東や葱を真白に醤油濃し
胎の子に初湯加減を聞く夜かな
明るくて雲も浮んでみたき春
涼しさに住んでもみたき土星の輪
氷柱にはなれず平らに氷る水
打水をけふは神輿の男らに
子規の忌の糸瓜・鶏頭・柿の鐘
一堂に姫や坊主や歌留多会
縦横に水羊羹の詰め合せ
地下鉄が闇を押し行く赤い羽根
落葉道長き小枝を拾ひけり
腰伸ばし見るや周りの潮干狩
ちらかつて庭うつくしや野分あと
手袋で好きな絵本を撫でてをる
妙齢の箸が転げて春の旅
風薫る本の中からその書評
大根があれば何とか成りさうな
花びらは箱根の山を越すつもり
行く年やいくたび鍋を囲みても
火の鳥の大いなるかな吉書揚
春昼の積木崩しの悲鳴らし
裸子の水に飛び込む水しぶき
月雪をさまよふ花の絵双六