濾過さるる珈琲豆や去年今年
新年や革のソファーに深々と
見開きの新年号の色香かな
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
濾過さるる珈琲豆や去年今年
新年や革のソファーに深々と
見開きの新年号の色香かな
昼寒し夜なほ寒し日々寒し
魂も冬青空も透き通る
雪に咲く白き椿の金の蕊
みちのくのここ千年の雪景色
身を細う落葉溜りの小草かな
ゆらゆらと磁石の針や春隣
伏せて置くバケツの上に雪丸う
自転車の籠にも雪の降り積る
雪の夜の地下に静かに閉架図書
差し足の鶴や氷をぴしぴしと
砕けては雪より白し玉霰
葱さげて家路の人となりにけり
金屏を立てたきほどの雪達磨
ここ掘れば雪にまみれし紅椿
派手好きの様見ておけと枯蓮
ラグビーのボール方向音痴なる
はるかぜを東の風と書くことも
春色を引く唇のまだ冷た
ビーナスに天使の降らす石鹸玉
光にも微かな重み石鹸玉
蕎麦にするか饂飩にするか梅見茶屋
暖かや前歯の欠けし女の子
海の見えるデパートで買ふ桜餅
俯せに本の眠れる蝶の昼
対岸の花に届けと花吹雪
花浴びて青草萌ゆる川原かな
火を焚くは戦の如し花篝
山々を押し開き行く春の川
細き枝の先の先まで芽吹きけり
恋猫でありし昔や猫ねむる
全山は今沸騰の桜かな
花びらは花を離れて空の旅
花びらは桜の花の涙かも
春暁の海滴るや桜海老
古き良きものの一つに春の風
蒲公英や波打際の波殺し
君知るや春あけぼのの豆腐店
生産地シールはピンク春キャベツ
食はるるを鶯餅はまだ知らず
暁闇の遅々たる刻を囀れり
囀りて羽搏きて尚もどかしや
囀や墨痕はまだぬらぬらと
禁色の紫を花菖蒲かな
紫と白の絢爛花菖蒲
三方へ絞りを垂れて花菖蒲