手袋を知らぬ紫式部の手
手袋で好きな絵本を撫でてをる
手袋はもしや眠れる猫の下
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
手袋を知らぬ紫式部の手
手袋で好きな絵本を撫でてをる
手袋はもしや眠れる猫の下
駅を出て徒歩一分のおでんの灯
おでん屋の出戻りの娘に通ふなり
今年あと余すところのおでんの灯
俳壇賞落選作抄
2016~2023、全12枚
、、、順次追加予定
全然堂 葉書俳句 2023
全然堂歳時記、開発素句報、落選供養など
全51枚セット
開発素句報 2023
全9枚
開発素句報 2022
全9枚
開発素句報 2021
全5枚
開発素句報 2020
全6枚
梅漬けし功に賜る赤き爪
長茄子は寝そべるやうな長さなり
寝返れば去年がころりと今年かな
神々も寂しかりしや秋の暮
原つぱも喇叭も消えて秋の暮
町の子に町の寂しさ秋の暮
小春日のそれは小さなエピソード
座布団や小春日和の人を待つ
小春日や枯れ行く草を暖めて
鳴き通す図書館裏の本の虫
童謡が「あれ」と歌ふよ虫の声
この頃の虫の弱音や数も減り
秋晴のマンション写真撮れさうな
桜紅葉桜黄葉とうち混じり
船外に泳ぎ遊ぶや天の川
満天の星に送られ流星は
流星に潮吹き上ぐる鯨かな
流星の降り止まぬ夜もいつか来て
変換の挙式と出でし虚子忌かな
シュッと出る泡の石鹸若葉の夜
真空を自由落下の羽根布団
のびのびと長き蛙や鵙の贄
鵙の贄鵙の帰りを待つ如く
鵙の贄月の光に冷ゆるかな
朝顔の花が減り葉に穴があき
朝夕の六時の暗さ曼珠沙華
柿の実に装填されし種八個
荒ぶるや門の仁王と菊の武者
桃の実の花柱名残といふあたり
穴のあるナットと穴のなき木の実
紫外線浴びて真赤な鶏頭花
団栗が旨し縄文土器を焼く
失敗を面白がつて夜の長し
頂上の光るは雪か雲の峰
酷暑日は本も机もほつかほか
町川の夕立濁りの塵芥
ぽたぽたと金魚を注ぐ金魚鉢
土嚢の如く金魚掬ひの子ら蹲踞む
金魚ゆらゆら母船を待つてゐるやうな
蟬の穴地下から掘つて来りけり
蟬の殻ぬるりと抜けて生れけり
羽化の蟬飛んで風化の蟬の穴
また一人行者降りくる雲の峰
空母対空母積乱雲真白
天上へ入道雲ののしあがる
夏休お代りをして褒めらるる
変てこな塔の工作夏休
いつまでも手を振る別れ夏休
ひるねしてみんなぐうぐうねましたと
庭先に水着吹かるる昼寝かな
昼寝覚この世が雨に煙りをる
万緑に光合成の今や旬
炎天をスポーツカーの真つ赤なり
水は清きわが故郷に帰省かな
香水の後を黒衣の揚羽蝶
香水や両肌脱ぎの夜会服
香水の瓶を融かして何作ろ
冠に二つ火のある螢かな
連絡船は磁気嵐とや螢の夜
螢火の歓喜観音様来る
せめてもの打水を打ち重ねたり
打水を固き大地が吸ひ込みぬ
打水の最中一天かき曇り
旅に良し家居また良し薄暑かな
通り雨薄暑疑ひなかりけり
軽暖のオープンカフェに人を待つ