腹巻の腹話術師もありぬべし
乾鮭に腸のなき叫びかな
青空を胸一杯に囀るよ
俳人、葉書俳句「開発素句報」「全然堂歳時記」発行人。
腹巻の腹話術師もありぬべし
乾鮭に腸のなき叫びかな
青空を胸一杯に囀るよ
両足で乗つて重たき踏絵かな
赤ん坊の足裏ふつくら汗臭き
山茶花の散り敷く上を土足にて
薫風に赤子の髪の逆立てる
爺婆の白髪めでたし七五三
黒髪の長からねども歌留多会
金目鯛頭一つを夕餉とす
頭が見えてやがて大きく初日の出
叩かれて釘の頭や寒明くる
石鹸玉吹くや子猫が目を丸う
モナリザの瞳に映る天の川
うす目して赤切れは物言ひたげな
恐竜は夕立に目を細めたり
強面の野分なれども目が綺麗
水平に目の玉ふたつ初日の出
口笛の如く流星刺さりけり
立冬や歯磨で歯を美しく
いもうとへくちうつしなる手毬唄
家族の春特急の窓に鼻押し当て
枯色をまとふ香水鼻を打つ
人の世の目くそ鼻くそ山眠る
寝転ぶに春の証の腕まくり
団扇絵の美人片手に夕涼み
梅が枝の肘の辺の氷柱かな
おかはりの言葉覚えて豆の飯
白玉や水に放つといふ言葉
そはそはは愉快な言葉春を待つ