ペアリング38 子に破魔矢持たせて抱きあげにけり 星野立子

追記:青き踏む・梅の香・夏帽子・夕顔・冬日/2021.3.19、大夕焼/2020.7.22、夏帽子/2019.3.16
移転:4句→ペア15「臨界近辺」

ペアリング38

◎さびしい答え

さびしいは寂しいですと春霰はるあられ  飯島晴子

初電話すこしさびしと答へけり  今井つる女

 

 

◎強火

うぐいすやつよき火きらふもちの耳  久保田万太郎

夕立後ゆだちごの強き火使ふ夕餉ゆうげかな  ハードエッジ

 

 

◎空襲

グラマンに追はれし丘の土筆つくしつむ  木田千女

大夕焼おおゆやけわが家焼きたる火の色に 鈴木真砂女

焼夷弾しょういだんのがれし土手や花火見る  川村みよき

 

 

◎子を抱く

かるがると子を抱きあげて青き踏む 伊藤トキノ

梅の香の高さに子ども抱き上げし 抜井諒一

人形を抱く子を抱きて夏の旅 大高翔おおたか しょう

抱き上げし子の夏帽子ちよつと邪魔じゃま 今井千鶴子  ちづこ

抱きあげし子の夏帽子落ちにけり 村上鞆彦    ともひこ

手花火を持たせてひざに抱き取りて 三村純也

夕顔や抱き上げて子の息甘し 長谷川櫂はせがわ かい

抱き上げて冬日のにほふ子供かな 中島斌雄   たけお

子に破魔矢はまや持たせて抱きあげにけり 星野立子

 

 

◎浮ぶもの

蟻一つ浮んでゐたるバケツかな  ハードエッジ

冬の水浮む虫さへなかりけり  高濱虚子

 

 

◎間投詞

童謡が「あれ」と歌ふよ虫の声  ハードエッジ

雪降るや何かと嗚呼ああの明治の詩  高柳克弘

 

 

◎女の半生

足袋たびつぐやノラともならず教師妻  杉田久女

毛糸編む女をやめてから久し  櫂未知子かい みちこ

 

 

◎冬の旗

旗のごとなびく冬日をふと見たり  高濱虚子

わが胸に旗鳴るごとし冬青空  野澤節子

 

 

◎バケツの雪

火事跡のバケツのふちにつもる雪  皆吉司みなよし つかさ

伏せて置くバケツの上に雪丸う  ハードエッジ

 

以上です